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管楽器調律とは

管楽器調律とは「楽器本体の素材が持つ固有ピッチを丹念に調整することで、音響的効率が最大となる」という、楽器の本来設計された音響特性を最大限引き出す調整法です。

戦前の時代に作られた所謂オールド名器にはそのような「調律」を施されたとしか思えないような形跡を多く発見することができます。このヨーロッパやアメリカの伝統的な技術から着想を得て、35年の研究期間を経て、現在の手法を確立しました。この方法は一つ一つ手作業で時間をかけて揃えていくことを必要とする為、マシンメイド主体による楽器の大量生産が求められる現代では、失われてしまった視点と技術だと私達は考えています。

大抵の楽器は製造時点から、特に高音域のツボとバルブを押して演奏する低音域のツボが本来の位置より高い場所になってしまっていることが非常に多く、奏者は「わざと高めに音を当ててから吹き下げる」という難しいコントロールを強いられています。本来の正しい位置にツボが戻れば奏者はもっと音楽の中身にエネルギーを使えるようになります。​

楽器本体の他に、金管楽器用ミュートの音抜け改善や、木管楽器の樹脂製リードの鳴り、​コントラバスのエンドピンなど幅広い楽器で効果を発揮します。

具体的な効果

  1.  音の芯と響きの一致​
  2. 上昇してしまったツボの復元、楽器のツボの前後の調整​
  3. レスポンス、響き、ダイナミックレンジの大幅な改善​
  4. ​同じ運指同士の音程のバラ付きの改善​
  5. 全音域に渡る音質と吹奏感の均質化によって、異なる倍音列同士の音の繋がりがスムーズになる。
  6. どの音域でも「音程のセンター」を狙って演奏できることにより、不自然な癖や無理な奏法が必要なくなる。
  7. 購入後数年経ち、鳴らなくなってきた楽器やヴィンテージ楽器の再生​​

調律の流れ

調律師の耳と手作業によって楽器の本体音律を丁寧に整えていきます。各メーカーごとに効果の現れ方のバランスが微妙に異なりますので、実際にお客様の音を聴かせていただきながら、一台一台作業を進めていきます。各パーツの固有ピッチ、吹奏感や鳴り方をチェックしますが、必要に応じて周波数スペクトラムアナライザーを使って調律前後で比較し、音圧や音程、鳴り方をチェックしていきます。必ずお客様が納得いくまで作業いたします。

なぜ手作業なのか

人間の聴感は繊細で、時には機械測定よりも微細な変化を聴き分けることができます。その音楽的な聴感により、ネジ一つからキャップに至るまで全てを丁寧にチェックします。経験を積んだ調律師が仕上がりを耳で聴いて判断しますので、見たまま真似されても同じ完成度には至りません。​これはピアノの調律で弦の音程をただ揃えるだけでは完成しないことと似ています。

機械で周波数データを測定しても、人間の耳ほど精度良く音色について計測することは難しいです。データを比較しても周波数ではわからないことのほうが多いのが実情です。

効果の持続性

楽器に使われる素材の真鍮はとても加工性の良い金属ですが、その加工性が故に年単位の仕様により徐々に歪みが生じます。木管楽器のグラナディラも同様に水分や乾燥によってごく僅かですが変形を繰り返しています。僅かなきっかけでもバランスが崩れていくこともございますので、半年〜1年に1度定期的な調律を推奨しています。​

アタリ個体、ハズレ個体

近年では楽器のメンズール(管体の内径形状設計)や品質管理に関しては、各メーカーの努力によりかなりの精度を達成しておりますが、肝心の楽器の吹奏感や音程の癖に関しましては依然としてバラ付きは無くならず、楽器の個体差というものは存在しております。実際に海外のメジャーメーカーから輸入した楽器でも、何もバルブを押さない状態でドソドミソと正しく演奏できる個体は数少ないです。

更に、楽器を豊富な在庫の中から選べる立場にあり、所謂アタリ個体に巡り会えたとしても、各モデルに共通して音程の悪い箇所があったりとまだまだユーザーの悩みは尽きません。 ​

楽器本体の調律の狂いを無くすことで初めて、本来の「楽器メーカーが意図した設計通りの音程と鳴り」を実現することができるという事実は、メーカーやリペア業界にもまだまだ十分に認知されていないのではないでしょうか。

私たちは楽器に最大のリスペクトを込めて、長く使っていただけるサポートをさせて頂いております。

マウスピース調律(金管楽器)

マウスピース調律とは金管楽器本体の調律の効果を最大限に引き出す為の処理であり、マウスピースの振動効率を最大にすることでレスポンスや音のピントをあわせる作業です。​​

マウスピースそのものの最大効率は一点の状態しか無いため、楽器ごとに合わせるのではなく、どの楽器で合わせたとしても同じように効果が出ます。奏者の好みというよりは、誰が吹いても吹きやすいという状態が存在します。

まとめると、

  1. マウスピース調律とは、マウスピースの構造上の最大振動効率を発揮する状態を作り出します。
  2. 100本から選びぬかれた選定品個体に近い状態へ
  3. 唇の振動効率が上がることで発音が明瞭になります。
  4. 音が広がりすぎているorこもった感じor遠くに飛ばない感じ、というのはそれぞれマウスピースのバランスの崩れによるもので、それらのバランスを丁寧に整えることで、適度な抵抗感で、遠鳴りする状態を作り出せます。

バーナーでだた焼いても音は良くなりませんのでご注意ください。プロの耳を使った試奏テストが必須です。

​近年では非常に高度な加工技術によって、楽器もマウスピースも根本的な完成度は大幅に向上しています。

しかし、これだけ毎日のように新しいマウスピースが大量に開発されている中で、満足のいく個体は一体いくつあるのでしょうか。ほんの僅かな形状と重量の違いや、完全に外観が同じでも材質で大きく変わってしまうので、マウスピースというものは本当に奥が深いのは事実です。

「これは音色はとてもいいけど、コントロールが難しい。逆にコントロールはいいけど、もう少し遠鳴りして欲しい。」ほんの一歩、奏者の要求に届かず、使われていなかったマウスピース達も全てこの方法によって、明日から本番で使えるマウスピースへと進化します。

あれこれと同じ用途の為のマウスピースを買い換えることも、最小限にできます。

更に詳しい説明

既存の技術として所謂「熱処理」をすることで吹奏感がフリーになり響きは豊かになります。音の遠投性が上がるとも言われていますが、熱処理の温度と時間の設定によっても結果は無数にある為、どうしても「奏者の好み」が楽器や奏者によって発生します。

このマウスピース調律では、楽器本体調律と同じように「奏者の好みとは異なる次元での変化」である為、マウスピースや楽器それぞれの本来の個性を最大限に引き出しつつ、最大振動効率を作り出すことで、何より最も大切な発音のまとまりやレスポンス、音程のピントを合わせることに成功しました。

実際に吹きながら音程のピントを調律師の耳で確かめながら一つ一つ手作業で合わせていく方法が、現時点では最も確実であると考えられます。

※上記内容は管楽器調律独自の解釈と研究です。